超安価な手作りモーター

簡易モーターの完成写真

クリップや安全ピンを使用した教材用のモーターはたくさんありますが、今回は超安価版クリップモーターを製作してみました。

このタイプのモーターで価格を押し上げる高価な磁石だけでなく、電池ボックスも使用しないため、1個あたり50円以下でできます。なんと、40人分が2000円でお釣が来る。(^.^)

しかも、整流子と(空芯コイルではなく)電磁石による回転子、電磁石の固定子を持っていますから、簡易モーターでは唯一、実用モーターの模型でもあります。よって、交流電源でも回転します。

なお、このモーターは"おもしろ実験・ものづくり事典"/東京書籍に「永久磁石なしクリップモーター-高価な磁石や電池ケースを使わないクリップモーター」として掲載されています。このほかにもいくつか採用されました。

おもしろ実験・ものづくり:東京書籍(ISBN 4-487-79701-2)
http://www5.tokyo-shoseki-ptg.co.jp/tosho_new/book/bookdata/11/4487797012.html

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目次

つくり方
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
必要な材料と工具
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
部品の製作
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
スタンド兼・ステータの加工
・・・・・・・・・・・・・・・ 3
回転子(ローター)の製作
・・・・・・・・・・・・・・・ 3
軸受けの組み立て
・・・・・・・・・・・・・・・ 6
ステーターにコイルを巻く
・・・・・・・・・・・・・・・ 8
組み立て
・・・・・・・・・・・・・・・・・10
調整
・・・・・・・・・・・・・・・・・10
動作原理
・・・・・・・・・・・・・・・・・11
考察・課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・12
参考資料
・・・・・・・・・・・・・・・・・13
付録
・・・・・・・・・・・・・・・・・14
文書情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・14

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つくり方

必要な材料と工具簡易モーターの材料のすべて

電池
単3電池1個・・・・・実売価格40円程度
針金
16番線 1m・・・・1円/10cm程度
エナメル線
0.6〜0.65mm程度の物 1m程度
クリップ
2個・・・・・・・・・0.5円/1個
ホッチキスの
No.10の針 4個(つながったまま)
ビニールテープ・・・・・0.7円
瞬間接着剤
ペンチ
その他の工具類
カッターナイフ、紙やすり

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部品の製作

とにかくきちんと正確に作ること。

スタンド兼・ステータの加工

16番の針金の中心をペンチで挟んで右図のように曲げます。この針金がモーターの転倒防止のスタンドとステーターを兼ねます。7インチのペンチで曲げると簡単にできます。

  1. 針金の中心を挟んではみ出した部分を垂直より少し内側に折り曲げる。
    針金のほぼ中心を挟んで、
  2. さらに、すこし外側に折り曲げる。
    上に折り曲げる
  3. 完成図
    図のように整形

回転子(ローター/アーマチュア)の製作 2連のステープルを張り合わせたところ

このモーターで最も重要なのが回転子(ローター)の工作です。ていねいにきちんと作りましょう。回るか回らないかは、ほぼこの工作で決まる。といっても過言ではないでしょう。

ホッチキスの針を2山ずつ分けて、お互いを背中合わせにして瞬間接着剤で貼り付けておきます。・・・瞬間接着剤は必須ではありませんが作業が楽になります。(写真は3連ですが2連で良い)


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説明図
  1. 巻き始めの図
    5センチぐらい手元に残して中心から巻き始めます。
  2. 一段目
    端まで巻いたら折り返して重ねて巻いていく。
  3. 普段目から反対側
    反対側も同じように
  4. 最後は中心に
    最後に中心で終わり端を反対側に伸ばす。
  5. この部分をきちんと整形
    この部分を一直線になるように、きちんと整形して

< 4 >

巻き終わりの状態

完成した回転子を軸から見たところ  回転子の完成写真

重心が中心に来るようにきれいに整形する。図のように軸端から見るとこんな形。

被覆をはがす。

一方の端はすべての被覆をはがします。

他方は図のように半分だけはがします。(はがす向きに注意・・・)

完成写真:全体が一直線に 軸方向から見た図

整形

円形に整形 最後にステープルの端を内側に折り曲げて円内に収まるように整形する。

作業完了後、もう一度、完全に整形しておきましょう。


< 5 >

軸受けの組み立て

この大きさのゼムクリップを使用します。 使用するゼムクリップ

  1. ペンチで挟む位置は折り返し部
    この位置を挟みます。
  2. 大きいループを起こして
    クリップの図の位置を
    ペンチで挟み大きいループを
    180度おこします。
  3. さらにまっすぐに
    さらにひねって
  4. 最終的に一直線に
    真っ直ぐに伸ばします。(2個作る)

< 6 >

  1. そのまま小さいほうを折り曲げて反転させる。
  2. 小さいループを折り曲げて
    端から15mm程度のところで
    垂直に折り曲げます。
  3. 完成図
    これで一組になります。
  4. 折り曲げ位置の目安
    軸受けの高さが電池に乗せたとき
    同じになるように・・

軸受け部の完成

上図のような関係になります。すなわちまっすぐな方が電池の陽極にあう位置になります。微調整のためピッタリよりはすこし長い方が良いようです。

ここまでのパーツ一覧

ここまでに揃った材料
ここまでで、出来上がったパーツです。科学教室などで作るときはここまではつくっておくと良い。


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ステーターにコイルを巻く

1で作ったスタンド兼ステーターにエナメル線を巻いてステーターとします。この時一方を時計回りに巻くともう一方は必ず反時計回りに巻いてください。

  1. ステータの完成図
    きちんと正確に巻くこと。
  2. コイルの巻き方向 巻く方向に注意
  3. 初めは時計回り
    最初は時計回りで始めたとすると・・
  4. 巻き上げて
    約1cmぐらい巻いたら折り返して、同じ方向(時計回り)に巻き。
  5. 反対側へ・・・
    反対側へ・・・
  6. 反対側は反時計回り
    反対側は反時計回り

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  1. 同じように巻いて
    同じように巻いて・・
  2. 折り返す
    折り返す・・
  3. コイルを巻き終わったところ
    こうなるはず。
  4. 軸受けをのせて
    エナメル線の皮膜をはいで、一方の端は軸受けに
  5. 軸受けと電池に固定する
    もう一方の端はマイナス極へ、ビニールテープでしっかりと固定する。
  6. 位置関係
    回転子・軸受けとの位置関係はこうなる。


最後に、完成図を参考にステーターの上部を回転子に近くなるように内側に曲げておく。

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組み立て

完成図

組み立てるといってもたいした仕事があるわけではありません

電池の陽極にクリップをつけて全体を右の写真のようにビニールテープで巻き、最後に、完成図を参考にステーターの上部を回転子に近くなるように内側に曲げて回転子を乗せるだけです。

調整

チェックポイント

回転しているところ【点検個所】モーターが回らないときの点検個所

回転しているところ


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動作原理

回転原理のアニメーション

このモーターは、回転子(アーマチュア :armature/ローター:Rotor)と、固定示(ステーター:stator)の両方に電磁石を使用します。回転子の被覆を剥いだ部分−−整流子(コンミテータ/コンミュテーター)−−が軸受けに接触すると電流が流れて回転子を回転する方向にそれぞれが磁化されます。

そのため、当然ですがこのモーターは交流でも問題なく回転します。

  1. この位置ではまわらない この位置では電流が流れないため力は働かない。
  2. この位置で反発して この位置で、それぞれが反発して、この場合右回りに力が働く。
  3. この位置では引き付けられ まだ力が働いている。
  4. ここからは慣性でまわる。 ここからは慣性だけ。
  5. まだ慣性でまわる。 慣性。
  6. ここも慣性 慣性。

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考察

手先が器用な人なら、全部作っても15分程度でできる工作ですが、教室などで行うと人数にもよりますが、「ここまでのパーツ一覧」までつくっておいても、(その前の説明なども加えると)2時間かかってもできない子がいるという状況になることがあります。

時間がかかっている作業を見ると、回転子にエナメル線を巻く作業が最も時間をとられるようです。次にスタータ部分の線巻きも時間を取られています。

そこで、力を発揮するのが完成品(サンプル)です。サンプルは必ず作成して子供たちがそれを見てつくれることが、とても重要です。

課題

もっと簡単に

歳を取ってくると(笑)、以前は何の苦もなくできていた、このような小さな工作がつらくなります。はめ合わせれば完動品ができてしまう工作しか知らない現代っ子も、このような精密な工作は苦手なようです。

当初の「超安価」という目的を満足しながら、より簡単な工作でできるモーターにバージョンアップしたいものです。

もっと高出力に

出力が弱い原因に「磁力が小さい」と「回転中の一瞬しかトルクが働かない」があります。磁力はエナメル線を細くして巻き数を増やすことで対処できるでしょう。トルクが加わる時間を増やすためには、ちゃんとした整流子が必要です。参考資料にある鉄心入り縦型整流モーターは、整流子をもつ簡易モーターのひとつですが、やはり作るのが難しいし、最近ではフィルムケース自体が入手しにくい。

モーターという定番ともいえる工作ですが、身近な本来は他の目的の素材から、自分の手で作ったものが動く--回転する--という感動は、キットや他の工作では得られないものがあります。工夫を積み重ねてよりよいものに育てていきたいものです。こうしてみたという改造版がありましたら、ぜひ、報告してください。


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参考資料

クリップモーター/簡易モーターのサイト
このクリップモーターを作るにあたって参考になるサイト
参考資料「究極のクリップモーター」楠田 純一さん
つくり易さ、シンプルに主体を置いたクリップモーター
http://homepage3.nifty.com/KUSUDA/JKEN/buturi/motor.htm
よく回る簡易モターを作ろう
モーターの基本的な原理から順を追って説明されています。
http://homepage1.nifty.com/seihotei/science/rejime/04_motor.htm
鉄心入り縦型整流モーター
ちゃんとした整流子をもつ簡易モーター
http://www.nnc.or.jp/~a_iguchi/rika/kikyo03h.htm
クリップモーター
これも整流子をもつ簡易モーター。少し大きい
http://www.t-ueda.jp/kotsu/moter/index.htm
コイルモーター
これはいわゆるコイルモーターですが容器に紙コップを使ってます。
応用・工夫
このクリップモーターを改良したサイト
磁石を使わないクリップモーター
ギジュツドットコム「技術おもしろ教材集」にある記事です。トップからだと → [教材紹介] → [電気] → [エネルギー変換技術]に関わる教材と進むと見つかります。
http://www.gijyutu.com/kyouzai/denki/coilmotor/
磁石のいらないクリップモーター
岐阜物理サークルの村田さんの手になるもの。
http://physics.atnifty.com/pdf/031006.pdf

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付録

科学教室などでの利用方法

科学教室などで利用するときは、ここまでのパーツ一覧までは、作っておくことを薦めます。また、必ず動く実物をテーブルの数(あるいは4〜5人にひとつ)は作って、それを見ながらつくれるようにしましょう。


モーターの種類

モーター(電動機)には、用途や電源によって膨大な種類があります。

このモーターは、回転子と固定子の位置関係で電流の向きを整える整流子のある「整流子モーター(電動機)」の一種で、回転子の巻線(電機子巻線)がと、固定子の巻き線(界磁巻線)が直列に接続されている「直巻整流子モーター(電動機)」(ちょくまきせいりゅうし・・・・・)に分類される。

また、固定子も電磁石であるため「電磁石界磁形直巻き整流子モーター」と見なしてよいでしょう。

この「電磁石界磁形直巻き整流子モーター」の特徴として、交流でも同じ方向に回転します。交流で運転する場合は、「交流整流子モーター」と分類して見よいでしょう。

この固定子と回転子の双方に(電)磁石を使用するモーターは、小型で回転トルクが大きく、電圧によって回転数が変化するという一般的な性質があり、これらの特性を生かして電動工具や小型モーターに使われています。

詳しくは、電動機 - Wikipedia(url: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%8B%95%E6%A9%9F)などを参考にしてください。


文書情報

更新履歴

First Published
2002-05-20
Last Modified
2007-07-22 08:20:06 (JST)
© 2005 - 2010 All Rights Reserved mailto:shizuka@ichiya.com

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このページの目次

つくり方
必要な材料と工具
工作に必要な材料と道具をそろえる。
部品の製作
材料を加工して部品を作る。
組み立て
調整
精度とバランスをチェック
動作原理
簡単な動作原理
参考資料
・・・
付録
文書情報

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